人生には1度しかできないことが何個かあります。
その1つが「生まれること」。
もう1つが「死ぬこと」。
そのどちらにも関わることができる仕事が看護師です。
当然、このドラマティックなイベントに立ち会うわけですから、いろんな出来事も感情も生まれます。
そして、臨床ではこの特別な2つは看護師にとって「日常」でもあります。
そんな「日常」の思い出話を少しだけ・・・・。
死神と言われた過去
みなさん、自分が生きていく中でこんなふうに揶揄されることあります?
えぇ、私はあります。
しかも20代で。
某病院で内科病棟勤務していた時でした。
私が勤務したら、ほぼ「死亡退院」がある。
病院とは言え、毎日死亡退院があるわけでもないんですよ、もちろん。
なのに、私が受け持ったら、なぜか「死亡退院」がある・・・。
いや、まじでお祓いに行こうかな、とも思ったもんです。
状態が悪い=死期が近づいている
そのような患者さんを看護する、それが当時の私の臨床でした。
その内科病棟では、最期を看取る、という仕事も多くありました。
そして、それはなぜか他の看護師に比べ、私が圧倒的に多かった時期がありました。
自分でも不思議でしたよ。
怖い、気持ち悪い、畏れる・・・。
不思議とそんな気持ちは微塵もありませんでした。
ただ単純に「なんで私の勤務の時に?」この気持ちだけでした。
件数が重なれば重なるほど、先輩看護師も私を揶揄し出します。
そう「死神」と。
今から15年以上前の冗談とはいえ、笑えませんでした。
言われてショック、ではありません。
本当に自分が死神が如く、受け持ち時間中に死亡退院するのですから。
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「ちょっと、ほんまに死神憑いてんちゃうか?」
1名の死亡退院を見送った直後にまた死亡退院があった、そんな日もありましたからね。
ただ、仕事ですから、死亡退院は怒涛の忙しさです。
そして、凹む。
肉体的にも精神的にも疲労が強い。
何よりやっぱり、死亡退院は凹む。
そして、またみんなが「まるで死神だね」とからかう。
若い私は正直悩みました。
「ついてる」の意味
それは2つの側面を持ちます。
- 何もなかった、暇だった、というポジティブな「ツイてる」。
- 逆にまるで何かに取り呪われるんではないかという「憑いてる」。
私によく用いられるのが「憑いてる」の方。
とにかく、私が勤務していたら、急変がある、トラブルがある、とまぁ損な星に生まれたと恨むしかないイベント目白押しな「憑き」です。
そんな中で私が勤務することは、パートナーとなる勤務者からすれば重要なポイントになるんですよね。
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「あぁ!明日ポーポーと一緒やん(ガーン)」
みたいな感じで。
こんなふうに揶揄されてる同業者、一定数居るじゃないかな・・・。
自分が悪いわけじゃないのに、なぜかいつもそういうイベントが起きる。
みんなが「あれどうだったの?」と噂してる中、必ず当事者として話すことができてしまう。
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「また、お前絡んでたの??」
半ば呆れて、半ば感心されて、いつも受け取られていますよ。
てか「あれ、どうだったの?」と「その場に居たこと前提」で話しをしてくる人さえいますからね、えぇ。
何も患者さんトラブルだけじゃない。
医者がブチギレただの、器械がぶっ壊れただの、病院に車が突っ込んだの・・・。
なぜかいつも居るんですよね、私。
今日は落ち着いてる、それは呪いの言葉
つい、言いがちなんですよ。
なんの気無しに。
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「あー、今日、落ち着いてますね」
なんでもない一言です。
ただ、おそらく看護師ならみんな知ってるんですよ。
これがNGワードであることを。
だから「おい!それを言うんじゃない!」とすぐに怒られる。
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「あーぁ。言っちゃったよー」
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「ちょ〜、言うたらあかんて・・・」
言ってしまった張本人は「・・・しまった」と激しく後悔する。
なぜ?
なぜそんなに嫌がる?
理由は明白。
なぜかそれを言ってしまうと、魔法がかかったように、いや、魔法が解けたように忙しくなるのですよ。
入院が来る、急変が起きる、何かしらのトラブルがある・・・。
だから、みんな思っても口にしない。してはいけない。
ベテランであればあるほど、言わない。言ってはいけない。
ただ、うっかり言えば、魔法が解けた!と言わんばかりの責められ方をします。
そして、このコメントを呟いた後は謎の緊張感が勤務終了時間まで走り続けます。
何もイベント起きないまま勤務交代時間になった時は
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「あー。よかった・・・」
とみんないつも以上の安堵をします。これなんでかなw
ここまで言葉に力があるなら、同じポテンシャルで宝くじでも競馬でも言い当てたいですけどね。
なぜだか、この場合の時しか効力を発揮しないんですよ。
言霊があるんでしょうかね・・・・。
七不思議の1つでしょうね(確か前にも七不思議あったな)
仏のような看護師もいる
逆に。
まさに逆に。
この人が勤務してるなら大丈夫。
トラブルがあっても大丈夫。
なぜか大きな出来事にならない。
そんな仏様のような看護師もいるですよ。
なんで?
本当に不思議です。
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「あぁ。今日は○○さんとだから安心。」
私が「死神」なら、その方は「仏様」ですよ。
悔しいくらい、現場が落ち着いてるんですよね、ほんと。
羨ましい!!!
たまーに、そんな仏様でも忙しい日もあったりする。
そんな日は「私ならもっとひどいことになってんじゃねーか」と震えます。
持って生まれたものがあるとすれば、それが影響しているとしか言いようがない。
そんな宿命も影響するのがこの仕事です。
全ては神様の仕業なのかもしれない。
生きるも死ぬも神のみぞ知る。
その両方に立ち会える仕事が看護師だもの。
人智を超えたことがあるはずだよ。
ちなみに。
私が「死神」と揶揄されて落ち込んでた時。
その時に助けてくれたのが尊敬するベテランおばちゃん看護師さんの一言でした。
そのベテランおばちゃん看護師さんと共に死後の処置をしながら
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「また俺の勤務で死亡退院ですよ・・・」
と呟いた時でした。
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「何いうてんの!アンタやから安心して退院したんやろ!そんなん言うたら患者さんに怒られんで!!!」
私に一瞥もくれず言われたその言葉は、まさに晴天の霹靂でした。
私はたくさんの患者さんの死亡退院に立ち会った。
その結果、私は看護観や倫理観や価値観が育っている。
私たちは人生において1度しか経験できないことに立ち会うことが許されている。
そこから何を学ぶのか。
座学だけで学べない勉強が、吸収しきれないほどそこには詰まっている。
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